五感が刺激される、
北の近江ならではの学びの旅
第1回 北の近江 越境学習プログラム モニターツアー
2025/12/26
2025年11月、企業の人材育成担当の皆さまをお迎えし、湖北地域(長浜市・米原市)を舞台にした2日間のモニターツアーを開催しました。
2025年11月、企業の人材育成担当の皆さまをお迎えし、湖北地域(長浜市・米原市)を舞台にした2日間のモニターツアーを開催しました。
湖北は、歴史・文化・自然、そして人々の営みが重なり合う、奥行きのある地域です。湖北の歴史や文化に触れ、地域で挑戦を続けるリーダーの声を聞くことを通じて、参加者個人としての学びを深めながら、地域での学びが企業研修としてどのように活かせるのかを探る場としました。
モニターツアー【1日目】
北の近江の歴史と文化を知る (長浜まちづくり会社 常務取締役 竹村光雄 氏)
まずは、米川が流れる長浜市街地のまち歩きから始まりました。案内人は地域の歴史・文化・産業を熟知し、この土地の魅力を伝え続けてきた竹村さん。
長浜は秀吉が築いた城下町としての区割りが今も残り、北国街道・大通寺の門前町として栄え、芸術家を惹きつけた町衆文化が息づく場所です。変わりやすい湖北の気候、渡り鳥が飛来する琵琶湖、山に囲まれた豊かな地形——自然と人の暮らしが深くつながる地域であることを感じられる時間となりました。
地域リーダーのあり方から学ぶ (合同会社LOCO 代表 宮本麻里 氏)
会場を古民家改装ワーケーション施設BIWAKO PICNIC BASEに移し、地域の暮らしを支える実践者からお話を伺いました。登壇いただいたのは、子育て・就労・暮らしの支援を行う宮本さん。
LOCOは、0歳から93歳まで幅広い世代が自然と集まる“まちの居場所”。親子カフェから始まり、子育てサークル、学び支援、在宅ワークマッチング、子ども食堂、ハローワーク出張所など、地域の支援を多層的につなげて展開しています。
宮本さんの「暮らし全体をとらえる支援」の視点は、企業の人材育成にも通じる"人を丸ごと見る"アプローチの重要性を感じさせる内容でした。
地域リーダーのあり方から学ぶ (株式会社ONE SLASH 代表 清水広行 氏)
続いての登壇者は、「米 × エンタメ × 地域再生」という独自の切り口で地域の未来を描き直す取り組みを進めている清水さん。
長浜市西浅井で形骸化していた祭りを1週間で再構築し1,000人規模のイベントに育て上げたエピソードや、「RICE IS COMEDY(米作りは喜劇だ)」のコンセプトのもと、お米の価値を再編集し発信し多くの方を巻き込んでいかれているお話は、地域資源の可能性を大きく広げるものでした。
ネガティブに捉えられがちな地域課題を未来に向けてポジティブに変換する姿勢には、"制約を価値に変える力"が溢れていました。
近江に根付く「発酵文化」に触れる (ハッピー太郎醸造所 店主 池島幸太郎 氏)
最後は、麹・味噌・どぶろくを醸造する「ハッピー太郎醸造所」を訪問しました。店主の池島さんから、発酵に取り組む背景や原材料へのこだわり、地域とのつながりについて伺いました。
地元産の米や大豆を使い、昔ながらの知恵を現代に合わせて再編集しながら商品づくりを行う姿勢には、「地域の食文化を未来につなげる」という熱意が込められていました。
参加者は、10日間で食べられる白みその仕込みにも挑戦。麹と大豆を混ぜる手触りや、発酵の香りを体感しながら、文化が“身体で理解されていく”学びの時間となりました。
1日目の旅を終えた参加者は、地域のリーダーの熱量、脈々と引き継がれる歴史文化に触れ、強い刺激とほどよい疲労感、地域のエネルギーをどのように自社の従業員に還元していくかという課題を抱えつつ、次の日の旅の学びに期待を寄せ宿に帰りました。
モニターツアー【2日目】
参加者は、早朝コーヒーを片手に琵琶湖湖畔を散歩し、自然との触れ合いで頭と身体をリフレッシュし、2日目に臨みました。
近江真綿づくり体験 (株式会社山脇源平商店 代表 山脇和博 氏)
1730年創業の「山脇源平商店」を訪問しました。店主の山脇和博さんから、真綿づくりの歴史や、伝統を未来へつなぐための挑戦について伺いました。
繭をほぐして蛹を取り出し、真綿を引き伸ばす工程はどれも繊細で、丁寧な積み重ねが品質を生むことを体感しました。
国産の繭が希少になる中で、「伝統を守る=挑戦し続けること」という山脇さんの言葉には、ものづくりに向き合う覚悟が表れていました。
ものづくりのこれからを考える (長浜まちづくり株式会社 常務取締役 竹村光雄 氏)
BIWAKO PICNIC BASEに戻り、再び竹村さんを講師に、地域の産業とものづくりの未来を考えました。
長浜・湖北エリアには、布団製造、絹糸の楽器弦づくり、人工衛星用高強度糸など、多様な産業が根付いています。かつて木之本地域には、世界的企業と競う規模のメーカーがあり、小学校に800名を超える児童が通っていた時代もありました。現在は人口減少や産業構造の変化が進む一方で、伝統技術を現代に合わせてアップデートする動きも続いています。
竹村さんは、近江商人の「持ち下り商法」「40歳隠居」「文化活動への投資」を例に、“適正規模で長く続ける”“文化とともに働く”という価値観を話されました。
ものづくりは、地域の文化・価値観・歴史そのもの。それを学びとして捉えることで、企業人材育成における"現場から学ぶ力"が育つことを実感できるセッションとなりました。
北の近江での企業研修の可能性を考える (グループワーク)
最後に、2日間の個人としての学びの言語化と、この体験を各企業の人材育成上の課題とどのように紐づけ、企業研修に取り入れられるかについて、話し合う時間を設けました。
参加者の心に残ったことをキーワードで書き出してもらいました。利他心/世間よし/三方よし/価値をつなげる/長期的な思考/チャレンジ/やってみる/ないものはつくる/ネガティブはチャンス/アップデート/想いを貫く/楽しむ/自分サイズで始める/美学/誇りを持つ/頭だけで考えない/アナロジカルでも良い/琵琶湖/地域への想い/歴史から学ぶ
- 各階層の人材育成: チームビルディング/上司×部下の相互理解/組織の融合/理念浸透/支社中核メンバの地域理解・地域との交流/福利厚生
- 組織の活性化: 経営者育成/管理職育成/次世代リーダー育成/新規事業開発/DX人材育成/シニア活性化
- 教養・刺激: 視野拡大/挑戦マインドセット/リベラルアーツ/人間力の向上
- 役員研修: 地域経営者との交流を通じた経営者の判断・胆力を学ぶ
- 管理職層: 自組織の事業・文化の捉えなおし
- 次世代幹部候補向け: 部門を超えた相互理解、交流、外部からの刺激
- 異業種の次世代リーダー層: 右脳から考えるリーダーシップ(知覚や判断力を高める)
- 新規事業開発担当: ニーズ把握とアイディア発想強化(新規事業立案)
- シニア層向け: 地域と社会で発見する自分の強み
- 部署メンバーまとめて: 組織開発・チームビルディング(相互理解、自分たちの理念の確認浸透)
- 支店のメンバー向け: 地域理解(地域の歴史やビジネスチャンスを探る)
上記のような活発な意見が交わされました。
2日間の濃密な学びの旅を終えた参加者は、湖北のファンになっておられました。両手にはお土産、胸には越境学習の可能性や再訪を想い、帰路につかれました。
実施者として、参加者の皆さまとまた会えるのではないかという期待と、「企業研修の受入れが盛んな県北部地域(長浜市、高島市、米原市)」の実現に向けた手応えを感じました。
編集後記 ― 地域を「共創の場」として捉える ―
地域は単なる研修の舞台ではなく、企業と地域がともに学び、新しい価値を生み出す「共創の場」であることを強く感じました。
歴史、文化、発酵、伝統、ものづくり。地域に根付いた営みひとつひとつが、参加者に新たな視点をもたらし、「働く」「生きる」「つながる」を再考するきっかけとなりました。



