事業者同士の相互体験から探る、企業研修提供のポイントや考え方
第2回共創会議レポート
2025/12/26
2025年11月11日(火)に、高島市にて第2回「企業研修の受入れが盛んな県北部地域に向けた共創会議」を開催しました。
コンセプトは、「地域の事業者同士で越境学習を体験する」。実際に企業研修を受け入れている事業者の話を伺い、ワークショップを体験することで、自身の事業へのフィードバックや企業研修の理解を深めることを目的としました。本記事では当日の様子を報告します。
【第1章】地域とともに歩む ~高島の老舗建設会社のリブランディングによる成長と人材育成
第2回共創会議は、高島市勝野(旧大溝地区)に本社を構える株式会社澤村(SAWAMURA)のオフィスを訪ねるところからスタートしました。
創業75年以上の歴史を誇る同社は、2019年にリブランディングをきっかけに、売上、社員数ともに約2倍の規模に成長してきました。地域の建設業でありながら、毎年約500名の新卒採用エントリーを集め、高島市内での認知度は80%近く(同社調べ)と高い水準を誇る同社の取り組みは、地域内外で注目を集めています。
また、SAWAMURAの近年の取り組みの特徴のひとつに社内外でのワークショップの活用があげられます。今回は、共創会議の一環として社内見学(オフィスツアー)をさせていただいた後、同社のリブランディングのお話を伺い、地域の企業が成長を実現するためのヒントを探るとともに、ワークショップ=体験と対話を通じた交流の価値を実体験させていただきました。
当日は澤村のひとづくり・カルチャー推進課課長の和田山さんから、以下のようなお話をいただきました。
1. 「きっかけを創造する」:事業の価値を再定義した転換点
2019年、本社オフィスリニューアルとともにはじまったのが会社全体のリブランディングのプロジェクト。新たに設定された企業ブランドミッションは「きっかけを創造する」でした。これは、SAWAMURAは建物を引き渡して終わりではなく、家やオフィスを通じてお客様が抱く「新しい暮らしが始まる」「未来を良くする転換点にしたい」という思いに着目し、「お客様が変わるきっかけを作っている」と自社の価値を捉え直して生まれたものです。 このミッションのもと、同社はびわ湖テラスの施工など、他社がこれまであまり手がけてこなかった建物にも数多くチャレンジしてきました。
2. 人を惹きつける「採用力」:地方であることの価値転換
SAWAMURAのブランディングは採用面でも大きな効果をあげています。以前は、学生向けの合同説明会などで「高島市の会社か」と敬遠され採用に苦戦していた時期もありました。しかし、ブランドとオフィスが変わった後、「こんな会社が高島にあるんだ」と、むしろ高島市に立地していることが、プラスに作用するようになりました。
さまざまな取り組みの結果、新卒採用のエントリーは年間約500名に上り、新卒で入社する人たちの出身地も京都や大阪だけでなく、徳島、和歌山、九州など、遠方の学生からも選ばれる会社になりました。
3. 地域活動を「人づくり」の成長機会へ
当日和田山さんがお話の中で特に強調されていたのが、「建設業は地域経済と100%密接に紐づいていて、地域経済の活性化が必須である」ということです。この認識のもと、同社は地域での活動を積極的に行っています。
例えば、かつて自社の敷地内で行っていた「SAWAMURAマルシェ」の経験も踏まえて、地元の方々と連携して「大溝まちづくりマルシェ」の実行・運営に関わっています。このマルシェでは若手社員が実行委員を担っており、社員が地域とコミュニケーションする経験自体が、社員の成長機会や自社の捉え直しの機会にもなっています。
当日の質疑応答では、参加者からの「まちづくりは事業になるのか?」という質問に対し、収益化は難しい部分もあると認めつつも、会社の魅力向上や活動自体を学びにする設計は可能であり、地域活性化の取り組みは企業の成長のきっかけにもできるとおっしゃっていました。 このように、リブランディング後のSAWAMURAは、単に建物を設計・施工する企業から、「社員の手による文化づくり」と「地域への貢献」を成長エンジンに変えることで、力強く進んでいるように感じられました。
【第2章】琵琶湖を人材育成のキャンパスへ ~大津の企業による琵琶湖畔の自然を活かした体験型学習
株式会社澤村の和田山さんのお話を伺った後、共創会議参加メンバーは、新旭のアクティプラザ琵琶に移動しました。アクティプラザ琵琶は琵琶湖畔に位置する、ホテルとレジャー施設を兼ね備えた宿泊施設です。琵琶湖の美しい景色を望みながら宿泊でき、周辺ではサイクリングコース「ビワイチ」などのアクティビティも楽しめます。
この場所では、学校や企業向けに琵琶湖畔での様々な教育事業を行っているオーパルオプテックス株式会社による「チームによるいかだづくり体験」を実際に体験させていただきました。大津市に本社を構えるオーパルオプテックスは、「琵琶湖の自然の良さをもっと活かしたい」という想いで創業された企業です。 一見するとカヌーや水上スポーツのレジャー施設と思われがちですが、実は「教育事業」を柱の一つとし、学校や企業の課題解決をサポートしています。
当日はいかだづくり体験の後にオーパルオプテックスの勝山様からお話を伺い、同社の取り組みから屋外アクティビティを軸とした研修企画のヒントを探りました。
1. 「楽しかった」で終わらせない
同社の事業は大きく4つ(教育、アウトドア、施設管理、スポーツ振興)に分かれますが、特に注目すべきは教育事業です。 外来魚調査やヨシ笛作り、いかだ作りによるチームビルディングなどを提供していますが、最大のポイントは「楽しかったで終わりではない」という点にあります。
特に企業向けのプログラムでは、単なるレクリエーションではなく、ESG経営(環境・社会・ガバナンスへの配慮)の文脈で活用されています。 琵琶湖という環境そのものを教材にし、持続可能な社会や環境への配慮を学ぶ場として、企業が「変わるきっかけ」を提供しているのです。
2. コロナ禍を経て高まる「チームビルディング」の需要
「今はもう、社員旅行や運動会のような社内イベントは流行らないのでは?」 そう思われる経営者の方も多いかもしれません。しかし、オーパルオプテックス様によると、法人向けのチームビルディング需要はむしろ増えてきているといいます。
その背景には、以下の課題があります:- コミュニケーション不足: コロナ禍を経て、社員同士の関係構築が難しくなっている。
- 離職率の問題: 人間関係の希薄化が離職に繋がっており、組織の結びつきを強める必要がある。
単に「景色の良い場所で仕事をする(ワーケーション)」だけではなく、自然を活かした「価値ある体験」を提供できるかが、選ばれる鍵となっています。
3. 世界レベルの人材を育てる
同社はカヌースクールも運営しています。これはニッチな習い事ではありますが、独自の育成により、昨年の世界選手権ではスクール生が日本人初の2位入賞を果たすという快挙を成し遂げました。 岐阜や京都など県外からも生徒が通ってきているそうです。
4. 雨天でも「心理的安全性」を作るプロの技
屋外研修で心配なのが天候ですが、同社は雨天時でも実施可能な陸上(室内)プログラムを多数用意しています。
この日の講演では、簡単な手遊びの実演がありましたが、重要なこととして強調されていたのは、ゲームそのものではなく、参加者が「失敗してもいい雰囲気作り」でした。
初対面や関係がぎこちないメンバー同士でも、まずは小さな失敗を許容し合える空気を作る。そこから仲間意識を醸成し、最終的にチーム目標へ向かわせるという段階的な体験設計がなされています。
5. 研修効果の定着への挑戦
研修に送り出す側としては「研修の費用対効果」は特に気になるポイントかと思います。
チームビルディングの成果は数値化しにくいものですが、同社では参加者が「今後どういう役割を担いたいか」を宣言して持ち帰ったり、水に溶ける紙にメッセージを書いて想いを共有したりするなど、感情的な体験として意識を定着させる工夫を行っています。
【第3章】振り返り ~相互体験での学びと気づき。今後、どのような体験の提供につなげられそうか?
オーパルオプテックスによるいかだづくり、事業に関する情報共有と質疑応答の後は、この日ご参加いただいた皆さん同士で、学び・気づきの共有と、外部から企業研修を呼び込むうえでのヒントについて対話するお時間を設けました。
- 「企業として付加価値を提供するための社内外とのコミュニケーションが参考になった」
- 「多様性を活かすためにブランドを軸として活用されていた」
- 「地域との共存を掲げて取り組みをされている点が印象的だった」
- 「場所や物理的なものがコミュニケーションや関係性に与える影響がわかった」
- 「実際に体験することの効果を非常に感じた。頭で考えているだけではわからない」
- 「スタッフから参加者へのポジティブな声掛けが安心感につながることを実感した」
- 「自然体験やみんなでつくる体験自体が実は今こそ貴重なのではないか」
- 「雨天などの想定リスクに対する備えや、それも楽しむスタンスが印象的」
上記は一例ですが、実際にオフィスツアーやいかだづくりといった「体験」をリアルに行ったことで、参加者同士の距離が縮まったのはもちろんですが、体験自体の価値や重要性を改めて感じさせられる機会となりました。
令和7年度最終回、第3回の共創会議は2026年1月29日(木)に長浜エリアにて開催予定です!初めてご参加の方も、すでに本取り組みに何らか関わっていただいている方も、ぜひお集まりいただき、意見交換できれば幸いです。
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